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神保町花月という劇場では日夜、芸人と演劇人による夢のコラボレーションが繰り広げられているらしい。

そんな噂を初めて耳にしたのはかれこれ5年ほど前で、以来ずっと興味をそそられてはいたのだが、実際目の当たりにしたのは今日が初めてであった。
2月の舞台で共演した、お笑いコンビアホマイルドのクニさん。
演劇の舞台という完全アウェーの場所で、芸人さんならではの存在感を見せつけた彼が、今度は自分のホームにかつての共演者である演劇人たちを引き込んだ。
これはもう、観ないわけにはいかないのである。


お笑いは大好きだが、テレビでしか観たことがない。

初めて目にする生の芸人さんたちの演技とも素ともつかないライブ感は、アドリブ部分は言うに及ばず、これはさすがに台本通りだろうと思われるキメゼリフにも妙な説得力を吹きこんでいく。

同じ演者でも、役者とは生態が違う。
やっぱりエイリアンだ、と思った。恐るべし、お笑い芸人。


そんなエイリアン軍団に対抗する俳優陣はというと。
実際、劇中にも常に芸人VS役者という構図があるわけだけど、それは見事なものであった。

殊に、今回の紅一点、かつ主演女優の藤田記子さん。

喋る側だけでなく、聞いてる方も息切れがしてしまいそうな長尺なセリフを、ものすごいパワーと抜群の愛嬌でもってぐいぐい押しこんで尻上がりに面白くなっていく様は圧巻であった。

演技も扮装も、あられもなくさらけ出すだけさらけ出していながら、不思議と下品ではない。それも常人には得がたい個性だと思った。
たしか私とほとんど同い年だったはず。はあ。世の中にはすごい人がいるもんだ。



そんなこんなでいい具合に興奮し、いい具合に凹んだ終演後、楽屋を訪ねた。

クニさんは共演時と変わらずの人懐っこい笑顔であろうことか

「今度はぜひスミコさんにも出ていただきたいんですが、どうですか!?」

などという、身に余るお誘いの言葉をかけてくれたが、瞬間、自分の顔がどうしようもなく引き攣るのを感じた。


クニさんごめんなさい、決していやだとかそういう罰当たりなことではなく、ただただ、怖気づいたのです。
「わたしもやってみたーい」などという軽はずみなことは口が裂けても言えないような、なんかそういう、いろんな意味ですごい舞台だったのです。


私事は置いといて。

今日は初日だったのだが、日曜の楽日までにはどんどん新しいアドリブが入ったりとかしてどんどんライブならではの面白さが増してゆくであろう、そういう舞台です。ぜひぜひご覧くださいネ。と、微力ながら宣伝。→公演詳細



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