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30デイズ・ナイト プレミアム・エディション [DVD]
これは吸血鬼のお話である。


相変わらずカバーの説明書きもろくろく読まずに借りてきたので、ぱっと見でゾンビものかと思ったのだが、
厳然たる吸血鬼ものなのであった。

吸血鬼の新機軸に挑んだ作品なのであった。


アラスカにある最果ての町が舞台。
ここには年に一度、30日間全く太陽ののぼらない「極夜」が訪れる。


隣の集落まではおよそ130km。
極夜の間は飛行機も飛ばない。犬ぞりだけが頼りの陸の孤島になる。
なので、住人たちのほとんどは極夜になる前に別の土地に移動する。
600人弱の町の人口は150人ほどに減る。


ジョシュ・ハートネットさん(初対面なのでさん付けにした)演じる主人公は保安官。住人の安全を守るお仕事があるので、当然町に残る。
彼の奥さん(離婚調停中)も保安官だが、よくわかんないけどたぶん勤務地が変わったのだろう。任務を終えて町を出ようとするも空港までの道中事故にあい、最後の飛行機に間に合わず、足止めを食ってしまう。

続々と町を出る住人達と入れ替わるようにして、怪しい男が町にやってくる。徒歩で。
髪がぼさぼさで目は血走り、歯がものすごく汚い、見るからに怪しげな男だ。
その男は酒場で揉め事を起こし、主人公にしょっぴかれると

「あいつらがやってくる。お前らみんな死ぬぞ、けけ」
と言う。

その前にも、大量に盗まれた携帯電話が燃やされていたり、犬ぞりを引くためのワンちゃんたちが全滅させられていたりということがあって、いよいよ極夜初日。

町は一斉に停電する。

電話もなぜか不通に。
主人公が発電所に駆けつけると、そこには管理人の惨殺死体があった。

光と移動手段・連絡手段を絶たれ、袋のネズミとなった住人達のもとへ、血に飢えたあいつらが襲い掛かる。
町は一瞬にして、吸血鬼たちの狩場と化したのであった。



およそホラーに不似合いな甘いマスクを持ったジョシュ・ハートネットさん(33)は、この作品のヒューマンな部分を十二分にしょって立っていたが、そのことはここでは語らない。ちょっと語るとすれば、極限状態の中で、別れるつもりだった妻への愛情と絆を再認識して、最後には命を賭して吸血鬼たちと闘う。ざっくりいうとそんなかんじだ。



新機軸である吸血鬼の造形である。

ドラキュラ伯爵に代表される王道のイメージ(私見)では
身分が高そう
インテリそう
基本美男美女
かっこいいキバでもって品よく血を吸う

とかなんとか、世界中の怪物の中でもイケてる要素が多く、腐女子の方々に大人気なのもうなずけるキャラクターだ。

しかしこの作品の吸血鬼たちは、見た目はほとんどゾンビ。
服装はいたって庶民的で、顔のデッサンがもれなく狂っていて、ガタガタのキバで血を吸うというよりもお肉ごと食べちゃうイキオイで首根っこにかぶりつく。

吸血鬼に血を吸われるときには、えも言われぬ恍惚感があるらしい
という話を聞いたことがあるが、こっちの場合はおそらくそんなものはない。
襲い来る吸血鬼たちに阿鼻叫喚の巷と化す様はまさしくゾンビ映画のそれである。

ゾンビとの違いは、彼らには理性があるということだ。
そして、統率するリーダーもいる。

リーダーは
「仲間を増やすな、狩った獲物は首と胴体を切り離せ」などと仲間に指示を出したり

「我々は長い時間をかけてようやく人間たちの記憶から消えることができた。これからもそうでなければならない」
などといい、町に火を放って証拠隠滅を図ろうとしたりする。

そこからは、気が遠くなるほどの長きにわたって、異端としての種を細々と繋いできた彼らの哀愁のようなものを感じることができる。
彼らは、自分たち異端がそれこそゾンビのように無尽蔵に増殖してしまえばその先には何が待ち受けているのかを知っているのだ。


そうした目線で観ていると、なんとなく身につまされるものがないでもない。


口元に滴る血を拭うこともせず、やっと見つけた狩場でひたすら人間たちを捕食している姿は、必死で草を食むうちのうさぎとどこか通じるものがあり、なにを考えてるかよくわからない黒目がちの瞳も、どこかいたいけに見えてくるのであった。








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